地方の可能性を世界経済とつなぐ——SHONAIがNEWPEACEとデザインする“地方の希望”としての出発点
プロジェクトヒストリー
2024.09.03
- #ブランド開発
正解や模範解答が存在しない時代においては、経済も企業も仕事も不安定で不確実なものです。変化すること以外に、確実なものはありません。
しかし、希望もあります。それは、人は誰でも変化をもたらす行為者になれるということです。
NEWPEACEが企画する、変化を通じて非連続的成長を実現した人々を追う連載「ビジョンの向こう側」。本記事のゲストは、山形県の庄内地域からまちづくりを手がける株式会社SHONAIの代表・山中大介さんです。
山中さんは、山形・庄内の課題解決事業を全国展開する大きな契機として、会社のリブランディングを実施。変化のパートナーに、NEWPEACEを指名しました。
ヤマガタデザインから、SHONAIへの社名変更。そして、ミッション・ビジョン、コーポレートロゴのリニューアル。会社の威信をかけたプロジェクトは、どのようにして行われたのでしょうか。
NEWPEACE代表・高木新平が聞き手となり、SHONAIがビジョンにたどり着くまでの道のりとその向こう側に描く未来を明らかにしていきます。
地方を変革する“外様”の背中を追って
──── そもそも山中さんは、NEWPEACEをどのようなきっかけで知ったのでしょうか。
山中:NEWPEACEの存在を知ったのは、「SHARE by WHERE」というカンファレンスでした。私が登壇した地域ビジネスについてのセッションで、高木さんがモデレーターを務めていたんです。
高木:僕はもともと別のセッションに登壇する予定でしたが、山中さんが登壇すると聞いて、モデレーターに立候補したんです。山形に縁もゆかりもない、いってしまえば“外様”の人間なのにもかかわらず、次々に事業を立ち上げて地域を変革している山中さんの話を、どうしても聞きたくて。
山中:そういってくださるのは嬉しいのですが、私は高木さんのことを知りませんでした。前職は三井不動産でしたし、当時は庄内から出る機会も少なく、スタートアップやベンチャー界隈の知り合いがほとんどいなかったんです。
あまりカンファレンスでは見かけない金髪で登場した高木さんを見たときは、「はいはい、そういう感じね(笑)」と斜に構えた見方をしてしまいましたが、話は本質的で面白かったですし、セッションも盛り上がって、そこで人間関係ができました。
そのあと、社員のみなさんを連れて、私たちが経営するスイデンテラスに泊まりに来てくれましたよね。
高木:山中さんの話に感銘を受けて、社員にも直接聞かせたくなったんです。そこでNEWPEACEの社員合宿をスイデンテラスでやらせてもらい、山中さんにも講演の時間をいただきました。
──── どのようなきっかけで、事業としてのお付き合いが始まったのでしょうか。
高木:最初のきっかけでいうと、これも山中さんの講演でした。NEWPEACEは鹿島アントラーズさんとお付き合いがあるのですが、鹿島のみなさんにも山中さんの話を聞いてほしくて、講演会を開いたんですね。
講演会の後に打ち上げがあったのですが、僕は都内でポッドキャストの収録があり、途中で帰らなくてはいけなくて。ただ、収録後にギリギリ間に合いそうだったので、車で2時間かけて鹿島に戻ったんです。
そのときに、ヤマガタデザインという旧社名に関して軽いディスカッションをして、「もしかしたら、実態とズレがあるかもね」という話になって。
山中:もう夜も遅かったので、詳しい内容は覚えていませんが、高木さんの話には納得感がありました。そのタイミングで「社名を変えよう」とはならなかったものの、「そういう選択肢もあるかもね」と感じたことは覚えています。
地方の希望としての、SHONAI
──── そのタイミングではリブランディングをする意思決定には至らなかったのですね。最終的に、どのようにしてプロジェクトがスタートしたのでしょうか。
山中:どういうきっかけか忘れましたが、また高木さんが連絡をくれたんですよ。「信頼するクリエイターを連れていくので、山中さんの話をもう一度聞かせてください」って。そのタイミングが、絶妙で。
実はその頃、長年勤めていた取締役が、会社を辞めるかどうか……という騒動があったんです。ヤマガタデザインの事業が全国に拡大しているタイミングで、なかなか社内の連携が取れておらず、いわゆる成長の歪みが生まれていました。
私としては、日本中の才能を取り入れ、事業を全国区にしていくことが庄内地域の活性化につながると信じていたのですが、彼からすると私が庄内から離れていくように見えていたようで。本人も、事業を拡大していく重要性は理解しつつ、それを庄内にどう接続していくかに悩んでいたんです。
また、後から聞いた話ですが、退職を検討していた取締役に限らずそういった印象を持っていた社員は少なからずいたようで……。
特に経営管理部門の社員からは、私たちが社会からどのような期待をされているかは見えづらいし、事業を全国に広げていくことが庄内にどう生かされるかも、想像しにくかったようなのです。
そんなタイミングだったこともあり、高木さんと社名について相談したことを思い出して、また深夜まで話し込んで。
最終的には、誰よりも私の考えを理解してくれている高木さんにお願いして、会社の在り方を見直してみようという結論に至りました。
──── リブランディングは、どのようなプロセスで行われたのでしょうか。
高木:会社名を変えるのか、ミッションやビジョンを変えるのかといった、具体的な話はしていません。ただ、コーポレートロゴに関しては実態とのズレを明確に感じているということだったので、一度持ち帰ることにしました。
コーポレートロゴを変えるといっても、ただ表層のデザインを変えればいいというわけではありません。ロゴは会社の背景にある想いやスタンス、実現したい未来を可視化したものであるべきですから。
そこで、これまでに何度も聞いてきた山中さんの話や、僕から見える山中さん、そしてヤマガタデザインという会社を改めて解き、繋ぎ合わせ、再構築していきました。
そのプロセスで感じたのは、山中さんという人間は、庄内という地域や、そこに暮らす人々の可能性を誰よりも信じているということ。
東京から庄内に移住し、可能性に賭け、周囲を巻き込んでいくスタイルは、従来の静的なロゴではなく、むしろ動的なロゴのほうがしっくりきます。背景をたどると、どんどんアイデアが出てきました。
ただ、ロゴを変えただけでは、抱えている課題を解決できないとも感じました。ロゴを変えたからといって、組織に生じている歪みがなくなるとは思えなかったのです。
そこで、ヤマガタデザインが存在する意義や、今後どのようなことを成していくべきなのかを考え抜きました。
ヤマガタデザインはもともと、山形・庄内「の」まちづくりをする会社でしたが、すでに山形・庄内「から」まちづくりをする会社に変化していて、全国各地に影響を与え始めている。それは地方にとっての希望であり、ますます現在の流れを加速していくべきである。
そうやって過去を紐解き、未来を編んでいくと、ミッションやビジョンを変える必要性感じましたし、さらには社名すら新たにすべきなのではないかと結論づけました。
だから、ロゴだけではなく、ミッション・ビジョン、新社名まで提案しました。表層を変えるのではなく、ブレない経営をし続けるための「ブランド」をアウトプットしたんです。
──── NEWPEACEの提案を受け、どのような印象を抱きましたか。
山中:ロゴ以外の提案があるとは想像していませんでしたが、「SHONAI」という新社名に込められた想いは一瞬にして理解できましたし、新しいミッション・ビジョンやロゴに関しても、僕の想いや言葉をこれ以上ない形で紡ぎ出してくれたと感動しました。
提示されたものは、言葉としてカッコいいとか、そういったことではなく、抱えていた課題を解決してくれるものだったんです。凪だったところにうねりが生まれ、ポジティブな変化が生まれていく未来が明確に見えました。
高木さんの才能やNEWPEACEを信じているというのもありますが、その場で感じた変化の兆しを信じて、提案を受け入れさせていただきました。
研ぎ澄まされたミッションは、ビジネスモデルすら変える
──── リブランディングを経て、どのようなブレイクスルーが生まれましたか。
山中:社員の会社に対するロイヤリティが、格段に上がりましたね。組織に生まれていた歪みは自然に取れていき、「庄内という地域に対してコミットしていくんだ」という士気が満ち溢れるようになりました。
地域のみなさんからも、より大きな期待を寄せていただけるようになったと思います。「社名が変わったんですね」という声もいただきますし、それによって社員もますますやる気になっています。
先ほど話題に出た取締役が、会社を辞めずに残ってくれたのも大きかった。まさか社名がSHONAIになるとは、想像もしていなかったようです。
また、「地方の可能性を世界経済とつなぐ」という新たなミッションには、会社の在り方を変えてしまうほどのインパクトがありました。SHONAIという新社名を授かったことで、「何をする会社なのか」が明確化されたんです。
SHONAIはその名の通り、地域に焦点を当て、教育や政治など街づくりの課題を解決していく会社として再定義されました。どっぷりと庄内地域に浸かることが、求められるアプローチになります。
ただ、私たちには、観光・人材・農業と、全国に事業を広げていくべき事業も存在しています。そこで、事業ごとに会社を切り分け、それぞれが非連続の成長を遂げていく体制にシフトしたんです。
もちろん、それぞれのグループ会社の成果は、SHONAIに還元されます。役割は違えど、一心同体です。だから、すべての社員のアドレスは「@shonai.inc」。
外を見る視点と内を見る視点の双方をグループに取り入れ、役割をしっかりと分けられたことは、社名やミッション・ビジョンを変更するという変数がもたらしてくれたものでした。まさに、今までにはなかった「新しいピース」です。
向かい風すら、味方につける
──── 新たなミッション・ビジョンを据え、社名を新たにしたSHONAIは今後、どのような未来に向けて走っていくのでしょうか。
山中:ビジョンそのままですが、地方の希望であり続けたいです。
庄内は決してアクセスのいい場所ではないし、人口も減少の一途をたどっています。こうした地域でビジネスを続けることは、一見すると非合理かもしれません。それでも会社が成長を続けているのは、地域に本気で向き合い、それを応援してくださる人がいるからです。
これは庄内に限ったことではなく、庄内のような「地方」の希望であると信じています。向かい風が吹く状況でも成長を続けられているのですから、全国各地で同じような変化を生み出していけるはずです。
高木:山中さんがおっしゃったことはとても重要で、向かい風が吹く地域で生み出せた変化は、言い訳をなくしていくと思うんです。
厳しい環境で生まれた成果や道具は、人々の認識を変えていきます。
かつて「1マイルを4分で走る」という人類の不可能を一人のランナーが覆した途端に、次々と不可能を打破したランナーが生まれたのは有名な話ですが、SHONAIはそういう存在になるべき会社です。
SHONAIは現在、ビジネスだけでなく教育や政治といった変革が難しい課題の解決に挑んでいます。それ自体が希望ですし、変えられないと思っていたものが変わっていく様は、まさに「地方の希望」になるはずです。
むしろこれからがおもしろいと思っているので、NEWPEACEとしても、引き続きSHONAIが起こすブレイクスルーを支援していきたいと思っています。
山中:20年後のSHONAIはNEWPEACEと一緒になっていると思います。半分冗談で、半分本気ですが、そのくらい密な存在として力を合わせていけたら嬉しいです。これからも、一緒にやっていきましょう。
詳しい事例紹介はこちらに掲載しています。
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