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一角の棚から始まるコミュニティ〜シェア型書店の流行に見るコミュニティビジネスの可能性〜

NEWPEACEのコミュニティマネージャー・nakaoです!

 

今回は、最近話題を集める「シェア型書店」の人気の秘密をコミュニティの視点から紐解きます。

 

2021年、渋谷ヒカリエにオープンしたシェア型書店「渋谷〇〇書店(シブヤ・マルマル・ショテン)」

 

シェア型書店「渋谷〇〇書店(シブヤ・マルマル・ショテン)」

 

「シェア型書店」とは本棚ごとにさまざまなオーナーがついて共同で本を売る本屋のこと。近年の「書店」と付くニュースと言えば、「書店ゼロ」地域の割合が急増(※)、都心でも老舗大型書店の閉店が相次ぎ、書店員さんの健闘はありながらもやはり盛り下がりが否めません。

 

ところが「シェア型書店」は首都圏を中心に全国で増加を続けており、その活況ぶりが続々とメディアでとりあげられています(※※)。

 

この傾向を象徴するのが、昨年の神保町のシェア型書店・PASSAGE by ALL REVIEWSの開店と、通りを挟んだ老舗大型書店・三省堂神保町本店の一時閉店です。

 

PASSAGEは2022年3月1日にオープン。書評アーカイブサイト「ALL REVIEWS」のつながりを活かした個性豊かな選書棚が支持を集め、今やシェア型書店を代表する人気店のひとつとなりました。今年の1月には店舗を拡大。併設のシェアラウンジもオープンしています。

 

一方、その約2ヶ月後に建物の老朽化に伴い営業を一時終了した三省堂書店 神保町本店の亀井社長は閉店セレモニーの挨拶で、コロナ禍による購買行動や生活様式の変化で「大型書店の存在意義も揺らいでいるのかもしれません」と漏らす場面もあり、2025年に予定された同地の新ビル竣工に向けて「我々書店が世の中にどういうことが貢献できるのかというところ、改めて模索し続けて、お客様にご提案できるような形にもっていきたい**」**と挑戦を訴えました(千代田区公式YouTubeチャンネル「三省堂書店「いったん、しおりを挟みます。」」)。

 

2つのリアル書店の明暗を分けたのは何なのか。もちろんたくさんの要素がありますが、今回着目したいのは、PASSAGE開店の理由の一つがコロナ禍で失われたつながりを回復するコミュニティ形成にあったということです。

 

出典:READYFORE (https://readyfor.jp/projects/passage)

 

PASSAGEのみならず他のシェア型書店の記事でも「コミュニティ」「つながり」「交流」の魅力が重要なポイントとして取りあげられています。

 

書店 “冬の時代” において、なぜシェア型書店は「強い」のか? そこにコミュニティはどのように関わっているのか? 迫っていきたいと思います。

 

朝日新聞デジタル「本屋ない市町村、全国で26% 業界はネット書店規制を要望、懸念も」宮田裕介 2023年3月31日 19時00分

 

※※「シェア型書店」を取りあげた記事

出店競争率40倍の店も!今、人気沸騰のシェア型書店とは?

シェア型書店(シェア型本屋、共同(型)書店、棚貸本屋などとも呼ばれる)とは、複数人に棚や区画を分けて貸し出し選書・管理してもらい、共同で運営するかたちの書店です。

 

基本的に並べる本は棚主の自由。新刊・古書問わず、単行本・雑誌、ジャンル、レーベル etc…ルールは一切ありません。お店には個性豊かな棚がずらりと並んでいて、まるで書店街をひとつの空間に詰め込んだような世界が広がり、本をきっかけに来店者と棚主はもちろん、著者や出版社なども巻き込んだ交流が生まれています。

 

出典:PASSAGE by ALL REVIEWS (https://passage.allreviews.jp/)

 

出典: Instagram ( @bookshop_traveler )

 

出典:Instagram ( @catsbookshelftokyo )

 

シェア型書店の中には満員御礼につき募集を停止していたり、空き棚の抽選倍率が何十倍というところもあります。

 

また、現在も全国で開店が相次いでいますが、クラウドファンディングの支援を受けているところも多くあります。注目すべきはいずれのプロジェクトも「シェア型書店」によってコミュニティによる地域の循環やにぎわいの創出を掲げており、一定の支持を集めていることです。

 

出典:MOTION GALLERY (https://motion-gallery.net/projects/jonansyotengai)

 

出典:CAMPFIRE (https://camp-fire.jp/projects/view/600770)

 

各種メディアでも「店主同士が交流を深めたり、商店街のにぎわいづくりに一役買ったりしている。」(毎日新聞「減り続けるまちの本屋さんに新風 各地に広がるシェア型書店とは」2022/3/10 15:48(最終更新 3/14 16:51))など、その効果が報じられています。

 

なぜシェア型書店はつながりの中心になり得るのでしょうか?

 

一角の棚から始まるコミュニティー −つながりが作る書店の新しいビジネスモデル

リアル書店が苦境に立たされる中でも、シェア型書店は目覚ましい広がりを見せていること。そして、シェア型書店がつながりの中心として注目を集めていること。実はこの2つは表裏一体の関係にありました。調べてみるとなんと! そこにはリアル書店の抱える困難を、人と人とのつながりで乗り越えていく仕組みがありました。

 

シェア型書店ブームに先立つ独立系書店の存在

2000年前後から書店数が右肩下がりで減少する中で、存在感を放ってきたのが「独立系書店」と言われる小規模書店です。独立系書店が画期的だったのは「選書」という店のバックヤードで行われてきた重要でも地味な業務を前面に押し出したこと。数多くある本の中から何を選び、どのように並べ、魅せるのか。選書を通して書店の世界観や書店員の価値観を発信し、独立系書店は来店者とのつながりを獲得してきました。

 

独立系書店にはファンコミュニティビジネス的側面もあります。さらに読書会をはじめとしたイベントの定期的の開催や、カフェのような交流の場を併設するなどして、規模は小さくとも根強いコミュニティを築き、ファンに支えてもらうことで、経営が成り立っているところが多いです。

 

 

出典:東京・西荻窪の独立系新刊書店 本屋Title (https://www.title-books.com/)

 

近年の「町の本屋」の灯りを守ってきた独立系書店ですが、経営に多くの困難を抱えてしまう実情があります。

 

例えば、開業のハードル。独立系書店の店主の中には、開店のために会社を辞めたり、中には借金をするなど相応のリスクをとっている方を多く見かけます。営業を続けていくにも、基本的に書店経営は薄利多売のため、人気店でさえ黒字化に頭を悩ませているところも少なくありません。

 

また、流通の格差。独立系書店は既存の書籍の流通網から漏れてしまう格差に直面してきました。近年は小規模書店にもやさしい流通の仕組みが広まるなど改善の向きはあるものの、今も配本が偏ってしまう問題が指摘されています(参照:『東京の生活史』(筑摩書房)の流通に関する経緯報告

 

最後に、深刻な人手不足。書店では力仕事も多く発生します。届いた本の荷ほどき、在庫の管理に棚の整備などなど、かなりの労力を費やします。しかし、店員を雇う余裕がない店も多く、結局店長一人でお店を切り盛りするなど、疲弊しやすい環境になりがちです。

 

どれも深刻な問題ですが、それでも独立系書店が増え続けているのは、一重に本と本屋が大好きな人がいるから。しかし、個人の熱意や手腕に頼り、利益を度外視せざるを得ない状況と常に隣り合わせになってしまう可能性をはらむビジネスモデルの未来は、決して明るいとは言い切れません。

 

人と人とのつながりが困難をチャンスに変える

シェア型書店も独立系書店の一形態ではありますが、これまでの独立系書店の広がりとは異なるすさまじい勢いを感じます。それは、シェア型書店が独立系書店の抱えてきた困難をコミュニティの力でチャンスに変えているからかもしれません。

 

シェア型書店が第一に謳っているのが「開店」の手軽さ。月額 数1000円で誰でも「本屋」になることができ、しかも管理するのは1棚分のみ。売上を期待することは難しくても、開店・営業に伴うリスクは格段に下がります。しかし、選書を通して来店者に読んでほしい本を届け、メッセージを伝えることができる点は変わりません。書店の開業を誰でもできる身近な体験にしたことが、シェア型書店の最大の功績でしょう。

 

出典:PASSAGE by ALL REVIEWSの棚主募集のチラシ(サイトではこちら

 

シェア型書店では棚主が本を用意します。よってシェア型書店が新刊書店ではないという前提はありますが、それぞれが並べたい本を調達して持ち寄るため、流通の問題が解消されます。また、棚の管理も基本的に棚主に委ねられており、店は共同運営で店番制度を導入している書店もあるので、人手不足の問題も起きにくくなります。このように既存の独立系書店が抱えていた困難を、シェア型書店は棚を介した人と人とのつながりで解決しているのです。

 

そして忘れてはならないのは、独立系書店はファンコミュニティビジネス的側面があったということ。つまり独立系書店(棚)の集合体であるシェア型書店は、たくさんのファンコミュニティの中心地と言えます。「◯◯さんの棚があるから行きたい!」「△△さんが本を棚に置きにお店に来るって!!」「今日✗✗さんが店番の日だ!!!」……独立系書店においてはしばしば負担になることもある業務が、多様な棚主の集まるシェア型書店にとっては集客のチャンスになります。

 

出典: Instagram ( @passagebyallreviews )

 

大型書店と独立系書店のメリットを結びつけるコミュニティ

品揃えが充実しており、人手や流通にも困りにくいが、個々のニーズに応えきれずに客離れが進む大型書店。対して、個性的な選書で根強いファンを獲得できるが、人手や流通で躓くことが多く、経営リスクの高い独立系書店。どちらもビジネスモデル上の困難を抱える中、コミュニティの力で両者の「良いとこどり」をしたのがシェア型書店の快進撃が続く理由なのかもしれません。

 

おわりに

今回はシェア型書店の人気の秘密をコミュニティの観点から考えてみました。そこには、本と本屋が大好きな人々が、つながりによってより健全なかたちで「本屋」を営むことができるビジネスモデルがありました。

 

シェア型書店は書店ゼロ地域にも広がっています(参照:CAMPFIRE 「無書店地域で本屋さんを復活!人々が自然と集い語らう“たき火”のような本屋の実験」)。コミュニティの力が書店 “冬の時代” に春の兆しを呼び込む日も近いのかもしれません。

 

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