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高木新平コラム|地域ブランディングの本質は、誇りを物語にできるかどうか

地域ブランディングの相談を受けるとき、
多くの場合、聞かれるのは
「何を打ち出せばいいか」という問いだ。

 

けれど僕は、いつも少し違和感を覚える。

 

問うべきなのは、
何を打ち出すか以前に、
何を信じるかではないかと思うからだ。

 

どんな地域にも必ず、
その土地に根付く圧倒的なものがある。
問題は、それを信じ切れているかどうかだけだ。

海外に出ると、日本の良さに気づくことがある。
水のうまさ、街の清潔さ、人との距離感。
日本にいると当たり前すぎて、
わざわざ言葉にすることもない価値だ。

 

地域も、まったく同じだと思っている。

 

その土地に長く住んでいる人ほど、
「こんなの当たり前だろう」と思ってしまう。
でも外から見れば、
それは十分に強く、誇れる価値だったりする。

 

僕は「未来は過去の再編集」という考え方を大事にしているが、

 

地域ブランディングとは、
新しい価値を無理につくることではない。
その地域に当たり前にある、確かな価値を編集することだ。

2023年から、富山県のブランディングとして
「寿司といえば、富山」を展開してきた。

 

マイナーな県だからこそ、
4000mの高低差という独自の地形を、
寿司という分かりやすい形で表現し、
一点突破で外の認知を取りにいく。

 

これは、PR的発想に基づいた
コミュニケーション戦略だった。

 

実際、この戦略は機能している。
寿司の消費額は日本一になり、
観光文脈でも食の文脈でも、
富山の認知は確実に変わりつつある。

 

2023年から始まった「寿司といえば富山」

 

それは、現場で素晴らしい仕事を
積み重ねてくださっている方々のおかげだ。

ただ、寿司といえば富山、という話と、
富山という土地が何を信じているか、という話は、
同じではない。

 

寿司は、外に向けた入口であり、
関係人口を生むための
コミュニケーションの手段だ。

 

一方で、
「この土地は、何をよりどころに生きているのか」
という問いには答えていない。

 

その問いに対して、
富山には最初から答えがある。

立山連峰だ。

 

富山を包み込む3000m級の立山連峰

 

立山は、富士山や伊勢神宮と同じように、
もともと信仰の対象だった。

 

ここで言っているのは、宗教の話ではない。
ブランドの話だ。

 

ブランドとは、
何を信じているか、ということだと思っている。

 

東京を信じるのか。
世界を信じるのか。
それとも、自分たちが立っている
この土地そのものを信じるのか。

 

地域ブランディングにおいて本当に大事なのは、
外に向けて何を誇るかよりも先に、
地域の内側に、信じ切れる対象があるかどうかだ。

富山の価値を辿ると、
その源流はすべて立山連峰に行き着く。

 

雪解け水が大地を潤し、
栄養を運び、富山湾へと注がれる。
豊かな魚介類も、
製造業や製薬業を支える水と大地も、
すべて同じ源流を持っている。

 

だから「寿司といえば富山」も、
突き詰めれば、
立山連峰という物語の一部にすぎない。

立山連峰を富山の象徴として掲げるというのは、
新しい資源をつくることではない。

 

そこに在るものを、信じ切る
という決断だ。

 

偶像崇拝というと言葉は強いかもしれない。
けれど、人は何かを象徴として掲げなければ、
誇りを共有することはできない。

 

この考え方に強い確信を持ったきっかけのひとつが、
薩摩会議というカンファレンスだった。
桜島のビジュアルを一貫して掲げ続ける姿勢に、
圧倒的な世界観を感じた。

 

地域カンファレンスの代表格「薩摩会議」
制作は、TSUZUKU 久保さん

 

地域ブランディングは、
結局ここまでやるかどうかだと思う。

そんな文脈の延長線上で、
カターレ富山の新ユニフォームをデザインした。

 

富山を代表する企業「ゴールドウィン」製作

 

地域を代表するクラブのデザインは、
単なるスポーツチームの話ではない。
それは、その地域が何を象徴として背負うかを可視化する行為だ。

 

掲げたメッセージは、
「富山を背負え。」

 

Creative Director:高木新平 (NEWPEACE)
Producer :渡辺夏彦 (NEWPEACE)
Art Director:今井祐介
Designer:高木紳介 (TAKI CORPORATION)
Designer:恩地遼平 (TAKI CORPORATION)
Production Producer:山田建太 (TAKI CORPORATION)
Photographer : 川村将貴 (CONTRAST Inc.)
Photo Assistant : 村上貴滉 (CONTRAST Inc.)
Retoucher : 津金卓也 (newgold)
Hair&Makeup : 坂田佳子 (A2)
Photo Producer : 池田了 (P.I.C.S.)
Photo Production Manager : 纐纈響輝 + 馬場大樹 (P.I.C.S.)

 

立山連峰という象徴を背負うこと。
それは、富山で生き、挑戦し、戦う覚悟を
引き受けるということでもある。

誇りは、放っておけば消えていく。
制度でも、予算でも、守ってはくれない。

 

誇りを残す方法は、ひとつしかない。
物語にすることだ。

 

寿司で外の認知をつくり、
立山連峰で内側の信念を定める。

 

プロモーションとブランドは違う。
前者は伝える技術で、
後者は信じる覚悟だ。

 

では、
あなたの地域には、
当たり前すぎて見過ごしている
「圧倒的な価値」はないだろうか。

 

地域ブランディングの本質は、
誇りを物語にできるかどうかにある。

 

 

富山県のカンファレンス「しあわせる。富山」
ビジュアルは、立山連峰で統一。制作はROLE羽田さん

 

 

 

今年も3月に開催予定。僕も登壇します。ぜひ! https://seichosenryaku-toyama.com

 

 

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