TimeTree | 言葉を軸にしたブランディングによる、経営判断軸の策定
CHALLENGE
OUTCOME
世界で5,000万ユーザー以上が利用するカレンダーアプリ「TimeTree」のブランディングは、真正面から言葉と、愛と、哲学とを軸にしたブランディング。単なる予定管理や予定調整ではなく、誰かとコミュニケーションを生み出すことを大切にしてきたTimeTreeは、誰かとの間に予定をつくることは「明日をちょっとよくしようと他者を思うこと」と背中を押し、多くの人々が時間管理に追われる現代社会において「わたし達の人生の時間は、一人で育てなくていい」と提案する。世界中の時間が、一人ではなく、誰かと育てられる未来をつくるために。
TimeTreeは、全世界ですでに5,000万ユーザー以上が利用する(内、日本ユーザーは約半数)カレンダーアプリ / サービスであり、日本初のグローバルアプリケーションを目指しています。日本をリードする勢いのあるスタートアップですが、その社内の価値観には、成熟とオープンなフレンドリーさが同居している、TimeTreeならではの雰囲気がありました。
驚異的な数のユーザーに愛されていながらも、単なるアプリ開発に焦点が当たらず、人生や生き方に対して、何を提供するのがやさしさにあたるのかの深い観察が、スタートアップとしての戦略実行速度と同居している。この「TimeTreeの雰囲気」のなかから、MVVのコンセプトとなる、アイデンティティワードを探すところから。社内・社外関係なく、プロジェクトメンバーはニックネームで呼び合い、オープンマインドにアイディアを加速させる、受発注の関係を超える雰囲気で、プロジェクトははじまりました。
プロジェクト初期では、3ヶ月間に及ぶインタビューを実施。いわゆる「カレンダー」全般について話す時間でも、単なる生産性向上やライフハックなどの話に及ばず、古代 – 中世 – 近代 – 現代の人間にとっての「時間」の整理や、ジャック・アタリを引用して「恒常的な徹夜」である現代への課題意識など、議論内容は哲学にまで及びます。その議論の結果、当初から感じていた「TimeTreeの雰囲気」は、数万字・数十時間のなかから「メメント・モリとやさしさ」としてまとめました。
メメント・モリとは、死を思うことで、生を強く思うこと。TimeTreeがカレンダーを通じて提供するのは、ただ忙しい毎日を効率的にこなすことではなく、近日中の予定の参加可否をまとめるだけでなく、人生の最後を想像したときに、誰かとの時間や思い出が、人生の幸福につながるのではないか、という企業哲学に基づいています。
だからといって「死ぬまでにやりたいことリスト1000」をガツガツとこなしていこうと提案するのでもなく、日々誰かとつくった予定が、人生のなかでちょっとした、だけど掛け替えのない希望になるということを、TimeTreeは提案します。人生全体を見据えながら、人間にとってちょうどいいサイズの時間をつくることをすすめる、その「やさしさ」は、TimeTree経営の今後を考えるのに、欠かすことのできない哲学でした。
この企業・ブランド理解に基づき生まれたのは、具体的なクリエイティブでも、企画でもなく、たった一言の「誘おう」というアイデンティティ・ワードでした。
「誘おう」というアイデンティティ・ワードを、ユーザー、ステークホルダーとも共有できるミッション、ビジョン、バリューへと展開させるために、極細部まで詰めて考える、コピーライティングの開発を開始。「誘おう」という言葉ひとつをとっても、さまざまな解釈、無限の戦略が生まれます。その可能性のなかから、YES or NOT を検討の過程では何百枚と描き、このアイデンティティから、どの方向へと進んでいくべきか、言葉による探究を続けます(その詳細は、TimeTree 公式noteをご覧ください)。
これまで、誰かと誰かの時間を繋げる、という橋型のコンセプトを掲げていたTimeTreeでは、誰の、どんな行動をエンパワーメントすべきかが曖昧になってしまう、という課題がありました。「誘おう」によって、今週末のちょっとした予定を友人と組むことも、長期的な時間軸で家族の予定をつくることも、それは「共に生きる未来」へと誘っていることだと、その行動の価値に気がつき、ゆえにTimeTreeがエンパワーメントすべきは、「誘い人」であり、この世界の「誘おう」という思いや、声であると定め、会社としてのTimeTreeのMVVが策定されました。社内の行動規範であるバリューも、スタートアップとしてのマネジメント / ワーク課題を解決しながらも、それぞれに「誘おう」というコンセプトに由来したものに。
策定されたMVVに基づき、新しいTimeTreeを印象付けるクリエイティブとして、ブランドムービー、キービジュアル、Webページを制作。ブランドムービーでは、ミッションとビジョンに込められた、ステートメントをもとに制作をしています。
満足も後悔も、誰かと過ごした全ての時間が、その人の人生を豊かにすると考え、わたし達はTimeTreeを開発しています。わたし達の人生の時間は、一人で育てなくていい。現代社会の「時間」の捉え方、過ごし方に対して、「誘おう」という思いや言葉が、どんな未来を作り出すか、TimeTreeのブランドビジョンをムービーとして制作しました。
(TimeTree様 リリースコメント)
MVVとセットとなる、VIを一新するために大切にしたことは、ITサービスとしてとにかく無駄がなく便利にするビジネスアプリとは異なる雰囲気として開発すること。それは、TimeTreeユーザーの人々の使い方、表情、場面を想起したときに必須の条件でした。家族や友人、恋人など、大切な「あの人」を想起したときにも、人の温度感を感じさせるような佇まいを探求し、「Tree」をテーマに、個性的なクラフト感で柔らかな世界観を視覚的にも開発。MVVの挿絵ではなく、デザインシステムを先に開発し、キービジュアルをつくる、といった工夫から、今後もさまざまなTimeTreeの側面で、展開を見込んでいます。
これらのクリエイティブは、2024年9月に創業10周年を迎えたTimeTreeのサイトに、ひとつのブランドアセットとして、ミッション・ビジョン・バリューとともに掲載されています。
TimeTreeが経営、サービス運営のなかで持つ哲学を、ユーザーから受けてきた愛情や、TimeTreeサービスのなかで目に見えず広がる愛情を、言葉を軸に、経営判断軸からクリエイティブまで広げた本プロジェクトは現在、同じ判断軸による新規事業開発へとつながっています。
TimeTreeというブランドが、未来の社会に向けて行う提案は、単なる広告や利用促進ではなく、現代社会の人々の時間感覚や、誰かと共に生きることへの提案、ひいては、次の時代の生き方・過ごし方の提案が、価値観として込められています。
NEWPEACEでは、要件定義書の作成前でのご相談を大歓迎しています。考え途中のメモ、書き記した数々の言葉たち、まだまとまっていない世界観。そうした価値観の種や言葉から、判断軸をつくるプロジェクトにご関心の向きには、ぜひお気軽にご相談ください。
NEWPEACEは、一緒に働くメンバーを募集しています!
山田 佑樹
TimeTreeブランディングのブランド戦略策定、MVVをはじめとしたコピーライティング、ブランドムービー、キービジュアル、Webのクリエイティブディレクションを担う。現在は、新しい判断軸に基づく、新規事業構想を伴走中。
桐野 遼
プロジェクトの初期から現在まで、戦略からクリエイティブまですべてのプロジェクトのフェーズで、プロジェクトマネジメントを担う。多くのTimeTreeメンバーのインタビューも担当。
羽賀 瑛優咲
クリエイティブ制作フェーズにおける、ブランドムービー、キービジュアル、Web等、クロスする制作物のスケジュールを管理進行。新規事業構想フェーズにおいては、美術も担当している。
花生 遊砂
ブランド戦略策定フェーズにおける、スケジュールを管理進行。要件定義前のプロジェクトデザインフェーズも担当した。
岡本 恵
NEWPEACEブランドディレクショングループの一員として、プロジェクトの初期から現在まで、あらゆる面でプロジェクトの進行、クオリティをサポートした。
洲崎 翔
ブランドムービー プロデューサー汐田 海平
ブランドムービー プロダクションプロデューサー(シェイクトーキョー)前川 恭平
ブランドムービー ディレクター(Alice Inc.)大川原 諒
ブランドムービー 撮影東岡 允
ブランドムービー 照明沓澤 りさ
ブランドムービー スタイリスト西澤 環
ブランドムービー ヘアメイク伊東 真美
ブランドムービー ヘアメイク中山 ゆき
ブランドムービー ヘアメイク河上 達也
ブランドムービー 録音/MIXslanted
ブランドムービー CGプロダクションYukino Kobayashi
ブランドムービー カラリスト磨田 幸樹
ブランドムービー 音楽プロデューサー(YUGE inc.)藤井 心
ブランドムービー 音楽山崎 菜結
ブランドムービー AP(シェイクトーキョー)赤迫 仁
キービジュアル アートディレクター(THE END)三國 玲衣奈
キービジュアル デザイナー(THE END)古島 きほ
キービジュアル デザイナー(THE END)Steve
Special Thanks