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広告とコンサルの未来

広告代理店とコンサルティングファームの境界はもはや溶け合い、課題解決産業として再編されつつある。この産業の未来をどのように描くべきか、クリエイティブファームの目線から持論を述べたい。

 

2010年、僕が博報堂に入社した頃、博報堂ケトルはメディアコミッションを脱し、クリエイティブスタッフがフィーで稼ぐモデルを示した。だが代理店ビジネスの本丸は依然として媒体取引という不動産業であり、当時はまだ棲み分けがあった。

 

潮目が大きく変わったのは、世界的クリエイティブファームDroga5が、アクセンチュアに買収された2019年。クリエイティブとコンサルの合流は世界的な既定路線となり、日本でも我々NEWPEACEGOのようなフィーベースの独立系が台頭。映像大手AOI Pro.TYOの経営統合にコンサルのフィールドマネジメント社が加わり、博報堂DY ONEではベイカレント型の業務改革に踏み込んでいる。

 

背景には、広告を打てば売れた時代の終焉がある。人口減少とメディアの細分化でマーケ予算はDXや組織改革へシフトし、論理とオペレーションを握るコンサルが主導権を握った。しかしAIの進化で正しい解は急速にコモディティ化する。そこで差をつくるのが、原資となる投資を呼び込むファイナンスと、機能価値を超えたブランドをつくるクリエイティブだ。最近では、宣伝会議のコピーライター養成講座の受講生にコンサルの若手が増えているらしい。

 

今後の産業図は〈案件化する力〉〈ビジョンを握る力〉〈圧倒的な実行力/制作力〉の三層に整理されるだろう。GOは先日、リンクアンドモチベーション(組織浸透)とサイバーエージェント(運用実装)を巻き込み、ビジョン層として機能する座組みを築いた。スター人材が求められるブランド構築を担い、両社のネットワークと実装で安全をストックに近づけたいということだろう。

 

同じ問いはNEWPEACEにも返ってくる。AI時代には、単なる営業を超えて投資を引っ張り案件化する力を持つか。クライアントのトップをビジョンで握ってぶん回すか。または高い技術を駆使したクラフト力を武器に指名されるか、はたまた圧倒的生産力をもったファクトリーになるしかない。

 

どこまでいっても属人的な仕事なわけだが、ブリーフィングを書けない(目指す先や課題が特定しきれない)今、上流の仕事ほど何をお願いするかよりも、誰にお願いするかになる。結局はどの物語に乗るかだ。KPIを握るだけでは企業は変わらない。胸が高鳴るストーリーが伴って初めて組織は行動を変え、市場に新しい選択肢が生まれる。だからこそクリエイティブ人材は、数字を読める力と同じ熱量で物語を仕組みに落とす技術を磨くべきなのだろう。

 

広告とコンサルの融合はゴールではない。これは単なる序章で、今後はスタートアップ、大学、自治体など多様なプレイヤーが混成チームを組むことが求められる。なるべく大きな課題の発見から事業化、投資回収までを一気通貫で設計する時代が来る。森岡毅さん率いる刀のような役割といえばイメージしやすいかもしれない。

 

ニューピースでは今、ローカル×ブランディングというテーマに注力している。地域のビジョンを描き、ブランドを開発し、成長可能性に伴走する。先日、私が取締役に選出いただいたSHONAIのような地域企業と連携し、ファイナンスから事業開発、そしてブランディングを一体のものとして仕掛けていくことで、全国各地に投資の好循環をつくりたい。それが日本の新たなビジョンにつながると信じている。

 

このような考え方をしてるので、僕はもはや既存のクリエイティブディレクターとは全く違う進化をしているわけだが、実は一つの未来像を体現しているとも思っている。そんな僕の活動に興味を持ってくださった宣伝会議にて、「経営者の参謀になるためのクリエイティブディレクション超実践講座」を開校することになった。限定15名、完全オフレコ/オフラインで、実践の最前線で得た知見を全て伝えていきたい。決して安くはないが必ず良いキャリアの投資になると約束する。興味のある方はぜひ参加してほしい。

 

宣伝会議さんが作ってくれた講座バナー

 

宣伝会議といえば、古くは糸井重里さんなど大御所の方々も通ったと言われる由緒ある講座である。僕は博報堂に入ったものの1年ほどで辞めてしまったので、このような業界の講座にもアワードにも全く縁がなく生きてきた。

 

その後、僕はスタートアップの起業家や経営者と様々な仕事をさせてもらい、いわゆる広告業界の当たり前とは異なるクリエイティブディレクター道を突き進んできた。それは経営者の参謀の道でもあった。こうしてNEWPEACEを創業して10年ほど経った今、講師として業界の大先輩方と名前を並べていただくのは、人生不思議なものである。

 

ただ一つ言えるのは、時代はこの流れにあるということだ。メディア構造、ビジネス環境、それらが大きく変わった中で、求められるクリエイティブディレクターのあり方は全く別物になりつつある。それはコンサルにも同じことが言える。なので、いわゆる”クリエイティブ”的な仕事に就いていない人も大歓迎です。気合いとほんの少しの言語化力があれば、誰にでもなれる可能性はある。

 

今回せっかくこのような機会をいただいたので、今まで表では伝えてこなかった思考や手の内をすべて言語化して伝えてみようと思っている。人前で体系化して教えることは初めてなので、全力でやる。だからこそ、めっちゃくちゃ大変になる予感しかしないので、連続講座は今回限りになると思います。興味のある人はぜひ応募してみてください。

 

広告でもコンサルでもない経営者の参謀になるためのクリエイティブディレクター超実践講座〈高木新平クラス〉

 

 

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【追記】

この夏の参議院選挙を見てても、電通や博報堂主導の広告マーケティングは、かなり影響力を下げているのがわかる。

情報不動産業として、マスメディアという希少価値の高い土地を独占的に売ってた。だからそこに何を乗せるかで、ある程度イニシアチブを持てた。

だけどSNSYouTubeがここまで浸透したら、その土地側の管理だけでは社会は動かない。ただSNSなんて無限にある土地なんて仲介価値がない。

だからYouTuber的な、自らどんなコンテンツをどこに流すかを、データを見ながらリアルタイムにやれる人が影響力を拡大している。もう広告を最適化じゃなくて、大量のコンテンツを流してアルゴリズムに最適化していくほうが広がるんだよな。

これはもう完全に別のゲームなので、世論作りの主役は変わっていくだろう。そうなった時に必要なのは、媒体最適な表現を作れるディレクターではなく、何をどこに流すかを指揮できるディレクターなのだろう。

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