熱量高いコミュニティの共通点とは?〜「みんなでつくる学大高架下」プロジェクトがうまくいっている理由〜
ナレッジ
2023.08.01
- #コミュニティ
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コミュニティづくりのヒントに溢れる「みんなでつくる学大高架下」プロジェクトについての記事です。ディベロッパーの一方的な再開発にならないよう、地域のコミュニティを巻き込みながらリニューアルを行っているプロジェクトの秘訣について紹介します!
NEWPEACEのコミュニティマネージャーのyusaです!
今回は、コミュマネの私が注目している「みんなでつくる学大高架下」プロジェクトについて紹介します。
出典:note
「みんなでつくる学大高架下」とは、学芸大学の高架下リニューアルを見据えて、高架下の使い方や街づくりのアイディアを創造していくプロジェクトです。プロジェクトリーダーの東急株式会社・植松さんをはじめとした5人の運営チームのもと、学芸大学の住民・事業者、クリエイターの方々が中心となって2021年より活動しています。
このプロジェクト開始の背景には、実はプロジェクトリーダー植松さんのある想いがありました。
かつて植松さんが担当した、中目黒の高架下リニューアルを行ったときのこと。リニューアルによって新たなまちの魅力と、新しい人の流れをうむことができた一方で、一部の地元の方から「知らない商業施設がたくさんできて、知らないまちになってしまった」という声があがっていたそうです。その反省から今回の学大高架下のリニューアルでは「地元の人に一番喜ばれる施設にしたい」という想いがありました。
始動から2年、様々なアイディアが形になりつつありますが、今回はコミュニティの観点からこのプロジェクトの活動をみていきたいと思います。
熱量の高いコミュニティ作りのポイント2つ
その前にまず、うまくいっている、熱量の高いコミュニティの共通点とは何か整理しておきたいと思います。
コミュニティを考える上で重要な要素はいくつかありますが、そのうちの一つが「ユーザーの特定」です。
コミュニティのメンバー(=ユーザー)はどんな人なのか、何に関心があって、何を課題と考えているのか、どういうモチベーションでコミュニティに関わっているのか… こういった情報をきちんと把握することが大切です。
この情報をもとに、コミュニティのコンセプト、運用の方向性を決めていくことで、メンバーの熱量が高く、持続性の高いコミュニティを作ることができます。
もう一つの要素が、メンバーのコミュニティへの関わり方、立ち位置です。コミュニティといってもその規模や性質によって様々な関わり方はありますが、その一つに「コミュニティのコンテンツ自体を自分のものと感じるかどうか(=オーナーシップ)」というものがあります。オーナーシップを感じる、つまりコミュニティが関わっているプロダクトやプロジェクトに対して責任感や所有感を共有している人々を特に「インナーコミュニティ」と呼び、ここに属する人たちをチームのメンバーとして平等に扱い、協力して仕事をするチーム環境を作ることが、熱量の高いコミュニティ作りのポイントとなります(参照:『People Powered』第2章*)
*参考書籍:『People Powered 遠くへ行きたければ、みんなで行け ~「ビジネス」「ブランド」「チーム」を変革するコミュニティの原則』ジョノ・ベーコン著、高須 正和 訳、2022年 技術評論社
キャラバンスタイルのユニークなユーザーヒアリング
さて、この2つのポイントを念頭におきながら「みんなでつくる学大高架下」プロジェクトをみてみましょう。
まず本プロジェクトは、「ユーザーの特定」を非常にユニークな形で実施しました。
学芸大学の住人には、どんな人がいて、このまちをどう思っていて、どのようになって欲しいと思っているのか。
それを明らかにするために「idea CARAVAN」という名のユーザーヒアリングを行いました。
これは、実際に学芸大学の駅周辺に出向き、通行人の人と交流しながら、地元住人がどんな想いをもっているのか、直接生の声をヒアリングするもので、これによって200以上の声を集めることができました。
出典:note
通常このヒアリングはアンケートを実施したり、ヒアリングの会を設けてそこに住民を招待して来てもらう、ワークショップ形式で行うことが多いのですが、限られた人に、場に来てもらってヒアリングするのではなく、自分たちが直接出向いて情報を集めるのがこのプロジェクトならではのユニークなポイントです。
地元クリエイターを実務レベルでプロジェクトに巻き込む
そしてこの「idea CARAVAN」を通じて、学芸大学には建築、フォトグラファー、デザイナーなどのクリエイターが多く暮らしていることがわかりました。そこで単にアイディア出しという形だけではなく、「実践的なところまで深く巻き込んだらもっと面白くなるんじゃないか?」と考え、クリエイターの方々をプロジェクトのコアメンバーとして巻き込むという判断をしたのです。
具体的には、まちの情報が詰まったフリーペーパーを学芸大学在住または学芸大学に思い入れのあるクリエイターで制作を担当したり、高架下の建物のデザインも学芸大学在住の建築系クリエイターと運営チームで一緒に担当するなど、実務レベルで住民を巻き込むことにしたのです。
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このように地元住民をうまくプロジェクトに巻き込みながら、高架下のリニューアルや活用方法を検討していった結果、さまざまなアイディアが形になっています。
今年の6月から工事が始まり、いよいよ来年の春に形になる、高架下の建築・デザインの検討チーム以外にも、たとえば、直近6月に実施したのは高架下のオープンスペースを活用した「学大高架下MARKET DAY !」の開催。フードやドリンク、古着やアクセサリーなど80以上のベンダーを巻き込み、2日間で1万人が来場する規模となりました。
出典:note
ユーザーを特定し、その情報を元にプロジェクトの方向性を決める。そしてプロジェクトに対してオーナーシップを感じる「インナーコミュニティ」に属する人たちを、チームメンバーのひとりとして平等に扱い、きちんと巻き込む。「みんなでつくる学大高架下」プロジェクトはまさに熱量の高いコミュニティに必要な要素を取り入れているからこそ、活動が軌道にのっているのではないでしょうか?
おわりに
今回は、「みんなでつくる学大高架下」をコミュニティの観点から取り上げてみました。
こういったプロジェクトはともすると、運営メンバーだけが盛り上がり、本来の主役であるはずの地域住民は全く関与していない、何が起きているかわからないままプロジェクトだけが進行している、ということになりがちです。
しかし、「idea CARAVAN」を起点としたコミュニティ設計と施策のおかげで、きちんと自走し、周りを巻き込む熱量高いコミュニティ活動が生まれたのだと思います。
実は私自身も学芸大学に住んでおり、一住人としてこの活動には興味を持っていました。改めてコミュニティ視点でこのプロジェクトを見ることで、この活動がうまくいっている理由がわかった気がします。
これからもコミュニティの成功例として、また一住人としてプロジェクトの活動の今後を見届けたいなと思います。
また、私が所属するNEWPEACEのCommunity Management Unitでは「コミュニティを作りたい!」「コミュニティづくりで困っている」といったコミュニティ運営にまつわる様々な相談をうかがっていますので、まずはお気軽にご相談ください!
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