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KURAND | 酒屋のリブランディング

数百の商品数を誇るお酒の製造小売業を、「クラフト酒」という新たな市場を開拓するオンライン酒屋へとリニューアル

クライアント
KURAND
サービス
ブランド開発
ソリューション
リブランディング支援

CHALLENGE

450種類もの商品数を持つ事業を顧客にとってより価値高いものにするには、ビジネスはどのようなステップで成長が見込まれるのか。また、お酒という商品の持つ「プロダクトアウトな商品作り」と「マーケティングに基づく商品作り」との中間には、どのような顧客価値があるだろうか?

 

OUTCOME

ビジョンに基づきステップバイステップの成長モデルを策定し、成長モデルに基づいて主幹サービスであるECサイトをフルリニューアル。ECサイトと450種類のお酒の顧客価値を定め「クラフト酒のオンライン酒屋」として、会社名の統合からSNSタッチポイントまで一貫した、新しい市場をひらくブランドとして生まれ変わった。


嗜好性や知識、既存の生活習慣の強い影響を受けるお酒という商品の価値を450種類というボリュームで届けるために、ヒーロープロダクトや新規ブランドの創出を選ばず、主幹事業のECサービスをフルリブランディング。会社名をサービスと統合し、オンライン酒屋「クランド」としてフルリニューアル。

 

KURANDが酒蔵とパートナーシップを築き届けるお酒は、見たことがない個性に溢れていても飲みやすく、専門的な知識がなくてもクラフトを楽しめる「クラフト酒」に統一。

 

「クラフト酒の世界をひらく、日本一にぎわい、愛されるオンライン酒屋。」というビジョンを掲げ、ビジョンを軸に事業とブランドを戦略づけ、日常的な非日常体験を届ける「クラフト酒」という新しい市場をつくり続ける、国内酒類市場をリードするビジネスとして生まれ変わった。


縮小するお酒市場と、KURAND株式会社のチャレンジ

日本国内のお酒(酒類業界)の市場は昭和平成と中長期的に縮小し、価値観や文化の側面でも、コロナ以降の飲酒習慣の変化や、ソーバーキュリアス(体質的にお酒が飲める人が、お酒を飲まないライフスタイル)という文化の誕生など、長期的な市場の変化と、短期的なトレンドの変化の影響を受けています。

 

高価格帯商品のニーズが限定的に増加するなかで「お酒の新しい価値をつくり、世界中のあらゆる人々の人生に、楽しさ、豊かさ、幸せを届ける。」というミッションを掲げる、80年以上の歴史を持つ酒屋を背景として持つスタートアップ、KURAND株式会社。

 

日本国内には今も数多くの酒蔵/酒造メーカーがあり、人の数だけ趣味嗜好が広がっています。酒蔵/酒造メーカーと酒屋が分離している構造では、優れたアイディアや技術を、顧客のニーズに寄り添わせることが難しいという課題がありました。

 

KURANDは、全国の中小さまざまな酒蔵/酒造メーカーと一軒一軒パートナーシップを構築し、酒屋として顧客の価値観やニーズを捉えた上で、オリジナル商品を製造、自社で小売販売も担ってきました。顧客の声を反映し、生まれた商品数は日本酒から果実酒まで、分野を問わず450種類を越えていました。

 

そんなKURANDの次なる挑戦と課題は、目指すビジョンの実現のため、日本でも珍しいお酒の製造小売モデルを通じて、サービスは何を顧客に届け、個性あるお酒はどのような意義を持つのかを定め、今後数年の成長ロードマップを経営から現場まで全員で腹落ちすることでした。当初、KURANDからNEWPEACEへのご依頼は、「お客さまにとって印象に残る強い商品をつくりたい」というものでした。

クリエイティブの前に、プロジェクトの判断軸になるブランド戦略を

NEWPEACEがはじめに行ったことは、数週間に渡るインタビューでした。KURANDの「印象に残る商品をつくりたい」という思いの裏には、単なる商品開発が目的ではなく、象徴的な商品をつくることで、当時35名だった社内メンバーに対してもブランドとしての目指すべき姿や判断軸を共有し、ひとりひとりの判断がブランドの成長に繋がる循環を産み出したい、という願いが潜んでいることが分かりました。その頃、社内メンバーからは主幹事業であるECを改修すべきという声が高まっていました。

 

NEWPEACEはインタビュー内容から、求められる打ち手の本質は「1つの強い商品開発」でも「Webサイトデザインの刷新」でもなく、累計1000以上もの高品質なオリジナルのお酒を作ってきたにもかかわらず、それが顧客に対して代替不可能な価値として伝わっていないことと考え、クライアントと共にプロジェクトの範囲を再検討を行いました。「オリジナルな価値を持つ自社商品だと伝わっていない」ことの解決に向け、サブブランド開発でもWebリニューアルプロジェクトでもなく、ブランドの軸となる新しいビジョンの開発、ビジョンに基づくブランド戦略の策定、VIの総リニューアル、EC刷新を含む、ビジョンを軸にしたリブランディングプロジェクトとして再スタートを切りました。

 

当時のクランドのECサイト。月10以上のオリジナル商品を開発している一方で、サイト上では自社製品であることもうまく伝えられていなかった

 

インタビューや議論を通じて、プロジェクトに新しいスコープが生まれていった

ブランド戦略策定は「KURANDらしさ」を体現するビジョンから始まる

KURANDのブランド全体を見直していくことが決まった上で、まずはじめに行ったのはビジョンを可視化することでした。そこで、組織のなかに無意識に眠る価値観を浮かび上がらせるために、創業者に対してインタビューを行いました。ここでは、時間軸、ビジョン、コンテキストを把握していくことを意識して、例えば以下のような質問を行っています。

  • KURANDのミッションで定義されている「あらゆる人々」とは誰か?
  • クランドは「売り場」なのか「商品」なのか「売り方」なのか?
  • KURANDが作り出す新しい市場に対して、どのような「山の登り方」を描くか?

インタビュー結果は、ただ議事録のようにお渡ししたのでは、あっという間にSlackやDropboxに眠ってしまいます。プロジェクトの初期段階から、数年後のビジョン浸透を見据え、コンテクストが透明に社内展開できるよう、「VISIONING interview」という読み物形式に編集をしてお渡ししました。

 

 

「VISIONING interview」インタビューの内容を踏まえて、ブランドの方向性を指し示す、ブランド戦略を策定していきます。ブランド戦略策定スキームに、どのようなビジョンや事業でも活用可能な、全方位的なものはありません。NEWPEACEは、経営戦略、プロダクトマネジメント、ブランディングそれぞれで考えるべきことを、ひとまとまりのブランド戦略としてまとめます。そしてKURAND/NEWPEACEのプロジェクトチームで全体を俯瞰し、ブランドコンセプトとして3つのコピーライトを、特に重要なクライテリアと定めました。

 

 

KURANDがお酒を通じて届けるのは、疲れた夜にコンビニで買う缶チューハイのような「日常的なお酒」ではなく、華やかなパーティーで開けられるシャンパーニュのような「非日常的なお酒」でもなく、親しい友人にシェアしたくなり、毎日の生活の中で少し日本のどこかに旅した気分で思い馳せられるお酒。日常の中で、非日常を演出するのが、KURANDが届ける価値

 

NEWPEACEのブランド戦略策定フェーズでは、単なる競合比較ではなく「未来の隣人」という未来発想型の競合/コミュニティ検討を行います。ターミナル駅で綺麗になった百貨店や、駅ビルにある洒落た食品屋さん、少し贅沢なスーパーやコンビニ。1本のお酒という「物」を届けるのではなく、お酒の向こうにある体験を売り場として届けることがKURANDの役割だとイメージをすることで『オンライン酒屋』というコンセプトが明確に

 

日常的な非日常を体験として届けるオンライン酒屋が届けるお酒は、手作りで個性があるけれどより多くの人の手に届くもの。誰よりもお酒に詳しく酒質を大切にするプロフェッショナルとして、専門的な自分たちの言葉ではなく平たくわかりやすい言葉で説明する。そのような専門性とマスが矛盾するエリアに、KURANDの生み出す新しい文化があると見出し、それを実現したものを「クラフト酒」という、新しいジャンルとして開拓して行くことに決定

ブランド戦略によって、ビジョンとクリエイティブを一貫させる

決定したKURANDのビジョンは「クラフト酒の世界をひらく、日本一にぎわい、愛されるオンライン酒屋。」。その経営ビジョンをサービス開発へと繋げてゆくために、顧客に提供する体験の約束として、ブランドスローガン「ひらけ!おさけ」を策定。ビジョン、ブランドスローガンと方針のレイヤーを明確に整理しながら、それらを全て包括的に体現するものとして、ステートメントコピーライティングや、ビジュアルアイデンティティなど、コアとなるクリエイティブから着手していきました。

 

 

 

次に、ブランドの顧客へのタッチポイントとして、日本市場での圧倒的な展開をまずは見据え、サービス名を「クランド」へ変更し、ECサイトをフルリニューアル。

 

スタートアップメンバーである社員へのタッチポイントとしては、ここまで議論されてきたブランド戦略を、ファインダーで眠るようなスライド資料ではなく『KURAND VISIONING Book』として社員の皆さまが名刺や営業資料替わりに使えるデジタルブックとして編集制作しました。

 

『KURAND VISIONING Book』の編集にあたっては、社員の皆さまが名刺や営業資料替わりに使えるよう、トップメッセージのみを掲載した社内報とするのではなく、生まれ変わるKURANDによって、実際に生活や世界がどのように変わり、何が期待できるのかを、全方位のステークホルダーへNEWPEACEが直接インタビュー。KURANDのパートナーである全国の酒蔵/酒造メーカーや、国内外のお酒文化のエキスパート、新卒の社員の方をはじめとしたKURAND社員の皆さまの声を、ブランド戦略とともに一つのデジタルブックへと編集しました。

 

 

KURANDのブランドをまとめた「VISIONING BOOK」

 

一目で新しい酒屋のすがたであることが伝わるように作られたサービスロゴは、クランドが酒屋文化のビジョンから生まれたことや、創業からの歴史や物語、日本の酒文化の歴史をひとつに収め、数百通りの中から決定。このロゴは、ブランドリニューアルのリリース後に、ファンコミュニティによって名付けてもらうプロセスを用意。リリース後には450件の名前の応募と、2500票の投票によって「くにゃんど」と名付けられ、アイデンティティが熱烈な顧客の声によって決定するプロセスで、顧客目線であり続けるイズムを体現しています。

 

「KURAND」という英字のロゴから、「クランド」というカタカナのロゴに変更し、招き猫のロゴシンボルも新たに作成。招き猫をモチーフにしている理由は、「人が集まり集う場となる」という意味合いと「創業期にKURANDの事務所に猫がいて一緒に暮らしていた」というストーリーから

 

 

 

 

 

FRACTAとの協業を通じて、ECサイトは、サービススローガン「ひらけ!おさけ」を体現し、好奇心の向くままに店内を見て回るだけでもワクワクでき、来店するたびに新たな発見とにぎわいを感じるオンライン酒屋へとフルリニューアル。難しいことを一切ナシに、クラフト酒の世界をひらくことのできるUXを届けています。

 

 

 

このようにビジュアルアイデンティティの刷新、ECサイトフルリニューアル、KURAND VISIONING Bookというクリエイティブプランを、ビジョンとブランド戦略を軸にディレクションを行い、ビジョンに基づいた一貫したブランドとして設計していきました。

 

また、リブランディングプロジェクト終了後も、NEWPEACEは2024年4月まで450以上の種類を抱えるお酒や、独自商品、キャンペーンなどの表現のアートディレクションを行い、KURANDの社内チームで新たな自走のかたちが生まれるまで伴走をしました。

 

 

ビジョンによって判断軸が生まれた、その1年後の経営インパクト

ひとつの強い商品ブランドを作りたいという思いから始まったプロジェクトは、社名とビジョンの変更を経て、KURANDの届けているお酒は「クラフト酒」であるというコンセプトに収束。主幹事業であるECサイトをフルリニューアルするという壮大なリブランディングプロジェクトに発展しました。

 

今回のブランドリニューアル後、KURANDの売上は大きく向上しました。ブランドリニューアル後の売上は、月平均で130%以上向上しています。

 

大きな要因としては、「日本一にぎわい、愛されるオンライン酒屋」「ひらけ!おさけ」というキーワードがあることで、社内メンバーが「これもやって良いんだ」「クランドらしいのはこうだよね」と各自で判断することができるようになり、メンバー主導の施策が増加したことがあります。

 

メンバー主導で、コアユーザーを巻き込んだ「クラフト酒」を研究するコミュニティがつくられたり、SNSでの企画なども頻繁に行われるようになっています。

 

 

さらにブランドブックとしてまとめられたVISIONING Bookは、当初社内向けのものでしたが、その完成度の高さから社外公開が決定。社外にもKURANDのブランドを伝えることを可能にし、今では採用候補者向けの資料としても活用されています。結果、採用候補者が「クラフト酒」「オンライン酒屋」といった言葉を面談時点ですでに認知した状態で応募してくることも増えました。新卒の応募は2倍以上増えており、KURANDの思想が社外にも強く伝わっています。

 

NEWPEACEでは、ブランドをビジョンからつくるプロセスにこだわっています。ビジョンを中心としたブランド戦略の提案からクリエイティブなどのコミュニケーションまでを担い、リブランディング後も社内教育や組織浸透によってブランドを守り続けることで、ブランドパートナーとして一貫したブランドをユーザーに届けています。

 


NEWPEACEは、一緒に働くメンバーを募集しています!
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チーム

Team

NEWPEACE

  • 山田 佑樹

    インタビューやワークショップを通じたプロジェクトデザインによってプロジェクトを立ち上げ、ブランド戦略を導き、課題解決のためのクリエイティブプランを策定。ビジョン浸透のための「VISIONING Book」を通じてブランド戦略を届ける。

  • 高木 新平

    プロジェクトの初期からデリバリーまで、ミッションに基づき一貫したプロジェクト・クリエイティブをディレクション。

  • YOPPY

    プロジェクト全体のアートディレクションを担当。クランドのサービスロゴはクリエイティブディレクターとともに日本全国の酒文化をリサーチし、自らデザイン。ユーザーに愛される「くにゃんど」を生み出した後も、デザインアドバイザリーとして伴走している。

  • 村上 明和

    クリエイティブプランの実現から、ビジョン浸透のための施策まで、ミッションやビジョンがユーザーや社内全体に浸透し続ける未来を見据えてプロデュース。

  • 飯村 一誠

    クリエイティブプランの実現に向け、パートナーとの協業や、ビジュアルアイデンティやECサイトリニューアルなど、複数のクリエイティブのプロジェクトマネジメント含め、プロデュース。プロジェクトのデリバリーを担う、カウンターパートを担当。

Partner

  • 才川 翔一朗

    Creative Director(Mukei inc.)
  • 株式会社フラクタ

    ECサイトUI/UXデザイン、実装
  • 関口 究

    Editor(QUOTATION / MATOI PUBLSHING,INC)

KURAND株式会社