「ブランド開発とは?」という永遠に解かれることのない疑問と向き合うために。-vol.1-
キャリア
2023.05.12
- #ブランド開発
- #キャリア
「リサーチは実務で引用される言葉に紐づく理論を強化することが仕事ではありません。肩の力を抜いて、定義的にならず、かといって2、3歩引いた目線でもない。私の立ち居場所で必要とされるのは、深いリサーチに基づくアイデアと現場の偶然で起きるクリエイティブジャンプを往復する柔軟な目線だと感じています」
「ブランドをつくる」と聞いて、皆さまはどのような仕事を想像するでしょうか?
「どのようにブランドをつくるのか?」
「本当にブランドは“つくる”ものなのか?」
「そもそもブランドとは何か…?」
そのジャンルにおいて、プロデュース、ディレクション、デザインといった手法でブランドは「つくられて」いますが、そもそもそういった今では一般的になっている言葉に対して、こうした疑いの眼差しを向ける人は決して多くありません。それはつまり、疑いの余地がないほどに社会に浸透している証しでもあります。そこと真摯に対峙するために、疑問を頂き、自他に投げかけ、時に学術的に、時に実務的に着手してきたのが、NEWPEACEのブランドディレクター/リサーチャーを担う山田佑樹。NEWPEACE社内の変化やそこでの自身のスタンスを軸にどのようにパブリックに向かっていくのか、を語ります。
山田佑樹(Brand Direction Senior brand director, researcher)
NEWPEACEブランドディレクションユニットのシニアブランドディレクターとして、経営戦略と顧客体験とを繋ぐブランド戦略をプランニング、ビジョンと戦略に基づくクリエイティブディレクションまでを一手に担う。クライアントの課題感へ深く共感しプロジェクトをデザインし、市場や顧客についてのリサーチ、ブランディング基軸の戦略策定、クリエイティブ成果物を問わないクエイティブディレクションを経て、ブランド戦略の浸透をワークショップ設計や編集行為を通じて届けている。
−− 以前のインタビューでNEWPEACEやVISIONINGに対して「きな臭さ」は感じたままで良いといっていたことが印象的でした。そのスタンスは変わらないのでしょうか?
入社当時は、会社や用いられる言葉について「きな臭さ」とか違和感を感じていました。現時点でも試行錯誤を繰り返していますが、根本のスタンスは変わらず、自分たちで自分たちを疑うようにしています。ただ、疑う対象は変わってきました。以前のように漠然と言葉やコミュニティーを疑うのではなく、具体的なビジネスモデルやサービス価値を疑うように変わってきたと思います。NEWPEACEはビジョンを軸にしたブランド戦略策定とクリエイティブディレクションに特化した「Brand Direction」、コミュニティ形成と運用を通じてビジョンの浸透を担う「Communitiy Management」、セミクローズドSNSをはじめとしたコミュニティ分析を支援するソフトウェア “comcom”を開発する「Product Development」という3つのユニットに分かれています。私は「Brand Direction」のユニットを仲間と率いていますが、この体制の以前のNEWPEACEでは、より精神的、人間的な繋がりを求められていました。良くも悪くも、創設期のスタートアップとして、仕事を通してではなく、人として信頼できるか、に重点が置かれていたように思います。小さなチームに分かれ、新規事業の実業化という難題にコミットしながらも、人やカルチャーについて考える時間がどうしても多くなる。豊かな時間ではありましたが、本当にVISIONINGは成立しているのか、プロジェクトに加わるクリエイターや、各々の現場がNEWPEACEの特殊性が現れているのか…そうした問いがありました。そうした中で、最近はこの問いに向き合うことができるレベルまで、実業が具現化され、成長してきたと思います。
−− 入社して1年半ほどですが、すぐに変われるのでしょうか?
私自身としては、元々そうしたビジョンを持って下地を作っていたことも影響していると思いますが、ユニット全体で大胆な判断をしたことがスピード感に現れたと思います。NEWPEACEは多様です。キャリアもルーツも異なる人間が集まり、関係性を構築することは、いかにVISIONING Companyを標榜していても時間を要します。社会的に意義の高い業務をしながらこの問題に向き合うために葛藤を抱えていたメンバーもいたので、一層のこと振り切ろう、と提案しました。この問題を、人間関係のより深い構築で解決するのではなく、相互に強く連携して高いアウトプットを出すこと、そして生まれるインパクトで信頼し合うスタイルに切り替えました。実務で繋がるために、NEWPEACEで気持ちの良いチームワークを作るという視点に変わりました。画角を替えるだけだったので、あまり時間は必要としませんでしたね。
−− ご自身に変化は?
寧ろ私がこれまでの人生でビジョンを追う中で感じていたリアルな温度感に近づいたかもしれません。NEWPEACEに入社した時は、良くも悪くもホープフルでした。メンバーは希望に溢れ、フレンドリーかつポジティブ。どうしてもビジョンを中心に生きると、酸いも甘いも嚙み分ける必要があります。普段そういうチャンネルは滅多に使用しない中でNEWPEACEにいる時は、ポジティブモードで仕事をしていました。プライベートで希望を見出すのではなく、仕事で極端なほど希望に溢れて仕事に取り組む、それ自体に希望を見出してもいたのですが、今はより肌感覚的に私自身の日常に近いと思います。
−− 相手に肌感覚を合わせることは、プロジェクトベースやビジネスシーンにおいて重要な要素だと思いますが、長く深い時間の中で醸成される集合の温度感でもあると思います。会社が変わり行く中で、ご自身のアプローチが異端であると感じていますか?
私自身では、そこは割り切っています。機動力を基盤とした組織にしていかなければNEWPEACEに未来はない、という危機感、緊張感といいますか。話題を仕事に集中させるように仕向けています。完全に割り切るまでには、1年程度の時間がかかったと感じています。私が入社して1年程経った2022年の秋頃に会社の形態が、NEWPEACEを母体に小さな子会社のように分かれたコーポレート制から、現在のカタチに変わりました。今では、大きな「Communitiy Management」という川が真ん中に流れていますよね。その横に細くて流れの激しい「Brand Direction」「Product Development」という川が流れているように感じています。流域が徐々に繋がって、大海に広がるイメージを持っています。もちろん、この川を滞りなく流すため「Corporate Office」の面々も欠かせません。
−− 言葉の使い分けに関して、例えば「ビジョニング」と「ブランディング」の違いなどは、ブランドコンサルティングにおいて、生命線になる筈です。根本的にこのような言葉への疑問もあるかと思いますが、ご自身はどのように使い分けされているのでしょうか?また、会社での共通意識などは感じますか?
私は大学教員がバックボーンにあるので、常にそれらの言葉の使われ方自体に疑問を持っています。「ブランド」や「ビジョン」という言葉だけではなく、「クリエイティブ」や「デザイン」という言葉に対しても同じです。研究者として仮説的解答を持っていますが、実業に向き合う中で私が選んだオプションは、敢えて自分たちが言葉に込めたい思いや特殊な意味を消す、ということです。社会で用いられている一般的な意味をキャッチするのです。私という個人でもNEWPEACEという集合でもなく、クライアントが思い描く言葉のイメージの方に耳を澄ませるということです。クリエイティブディレクションやプロデューサーとは、という魅惑的な問いに対する明確な解答は必要ありません。それ故、NEWPEACEが思い描くブランディングとは、という定義も深い意味はありません。唯一定義があるとすれば、まだ誰も話していないVISIONINGのみ。これらの言葉の解釈を説明して、VISIONINGの定義の説明に移行することはありますが、プレゼンテーション手法の一つに過ぎません。私たちはプロフェッショナルファームの一員です。言葉の違いを生み出すために、定義ではなく実務で提言すべきだと確信しています。
−− VISIONING以外の他の言葉を普遍化させることで、その特異性を浮き彫りにさせていく、という手法ですね。
個人的な気持ちを契機に、先人が培ってきた土俵で戦おうとしないことは重要です。少しずつ違和感は薄れていきましたし、リサーチの観点でいうと、VISIONINGを本当に市場で成立させようとするのであれば、VISIONINGの周辺にある概念との距離を正確に記述することが必要だと思っていたので、現実味を帯びてきていると思っています。これについては入社前の最終面談から話していることです。当初はリサーチャーとしてアプローチしようとしていたのですが、現在はそこに実業でのプロセスやアウトプットから近づくことができています。ブランド戦略やクリエイティブ提案のプロフェッショナルとして振舞いながら、確固たる知識を下地にして、少しの特殊をまぶすことで余白や遊びを生み、新しいアイデアや新規事業、ブランドに優位性を得るためにVISIONINGがあると考えています。
— 山田さんという個人とNEWPEACEという集合がそれぞれに思うVISIONINGに違いはあると感じますか?
大いにあるのではないかと感じています。寧ろ日に日に増えているかもしれません。NEWPEACEはミッションとして「価値観を仕事にする」と掲げています。この言葉だけを掻い摘み、エネルギーを持って熱狂しているかというと、私のリアリティにはありません。当然理解はしていますし、事業や日々の判断のクライテリアにはしていますが、この言葉の本質的な意味には届いていないと思います。ミッションとはそういうものと考えられることもありますが、NEWPEACEは小さいスタートアップながらも広いエリアの中で事業に取り組んでいるので、おそらく思いは各々異なると思う。それでも敢えてNEWPEACE全体で考えた時…ということですよね。NEWPEACEの全ユニットが協働するプロジェクトが現在はほとんどないのでイメージが難しいですが、やはりそこはリサーチャーのミッションとして、定義と意味を生み出す実業を行き来することで、同じ方向を向けるように力を加えたいと思います。普段こうした課題を支援する私たちにとって簡単ではない命題です。
−− 統一感は必要だと思いますか?
統一感を大衆化と捉えるならば、必要だと思っています。例えば人材採用の際にVISIONINGとは、と尋ねられたとします。過去には、VISIONINGについて社内のメンバーは理解しているのですか、と質問するエッジの効いた新入社員もいました。両親に仕事の内容を明確に説明できない、という意見もリアルですよね。統一感がない故ではなく、大衆的ではないことを表している最たる例です。内と外をコネクトするために、言語、振舞い、ビジネススキームを必要以上に難解にさせない。自分自身が信じることができるからこそ、外の世界にも信じてもらえる。それを実業として遂行するために、一般化、大衆化するのです。
−− 山田さんは学術から実業に向かうという特殊なキャリアなので、言葉の定義などの議論になった際には相手側が身構えることもあると思います。それを解決するためにも、個人や会社内に浮遊する言葉やフレームを参照し、一般化させようとするのは自然な流れだったのかもしれませんね。
他のメンバーが使う言葉を学術的に強化させることは、決してリサーチャーの仕事として取り組まないと断言してきました。だからといって、私自身も定義でコミュニケーションをしません。肩の力を抜いて振る舞えるようになったと思います。例えば、私たちの「Brand Direction」ユニットは、大型のリブランディングの際にはNEWPEACEの最前線に立ちます。そこで必要とさせるのは、リサーチャーとして2、3歩引いた目線ではなく、深いリサーチに基づく洞察的なアイデアと、現場の偶然で起きるクリエーティブジャンプを往復する柔軟な目線だと感じています。
NEWPEACEは、一緒に働くメンバーを募集しています!
募集中の職種は、こちらからご確認いただけます。
案件のご依頼や相談については、こちらのフォームよりご連絡ください。