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「ブランド開発とは?」という永遠に解かれることのない疑問と向き合うために。-vol.2-

「常にブランドコンサルティングが虚業になり得る危険性を直視し、
人の声や思い、実業に深く耳を傾け、ビジョンと実務を行き来する。
ビジョンが実業と結びついていると確信できるまでそれを繰り返すことが大切だと思っています」

 

 

山田佑樹

シニアブランドディレクターとして、経営戦略と顧客体験とを繋ぐブランド戦略をプランニング、クリエイティブアウトプットのデリバリーまでを一貫して担う。上場前のベンチャー企業から、売上高数千億円規模の老舗企業まで、多様な規模や業種のビジネスに、経営戦略とクリエイティブプランニングの立案と実装を通じて、経営層のコンサルタントとして伴走している。

 


 ここまででお話されているように、VISIONINGを根底にブランドディレクター、プロデューサーとして稼働することが多くなったと思います。そのような立ち位置や肩書きに馴染みはあるのでしょうか?最近のビジネスシーンでは、肩書きや分業の細分化は以前よりも進んでいる印象がありますが、実務を通してどのように捉えているのでしょうか?

確かにブランドディレクターという立ち位置ですが、これがディレクションだと決めて動いている感覚もないし、プロデューサーとして動いている時もプロデュースはここまで、といった感覚もありません。あらゆるコミュニケーションのために一般化は不可欠ですが、実務としてはそうした古典的で個人のアイデンティティー中心の慣習には抗おうという意識があります。肩書き先行の意識自体にも疑問を抱いています。例えば大手広告代理店のプロデューサーとNEWPEACEのプロデューサーではそこに行き着くまでのプロセスが全く異なりますし、ディレクターという言葉の広さは業界内で全く違います。実際に社内でそういう議論は多々ありました。ただ、そういうのさえもやめようと。プロデューサーとは何かといった議論は新しい価値を生み出そうとする実業にとって必要ないものです。

 

 

 ただ、そうなると役割分担の明確化が必要になります。肩書きの細分化の利点はそこが自然と明確なので、各領域に他者の介入がありません。どの立ち位置のクリエイターがどこまでの仕事を手掛けるのか。プロジェクト立ち上げ前に明確にしておかなくてはなりませんね。

その点は極めて慎重かつ精緻に考えます。私がチームをプロデュースする時には、どのようなケイパビリティを発揮するために、どこから考えて欲しいかを明確に伝えます。以前は肩書きでのアサインが多かったです。例えば、「クリエイティブディレクターとしてアサインします、以上」のように。今は肩書き先行ではなく、プロジェクトのビジョンやビジネス上の戦略を漏れなくクリエイターたちに伝え、アート、Web、映像といった多様なクリエイティブに関わるディレクターから、コピーライター、グラフィックデザイナーといった作家性と向き合う人々まで、プロジェクトチームに加わって頂いています。肩書きによって役割や境界を作らないので、稼働費や予算などはステークホルダー全員でプロジェクトの手法を深く考える必要があります。ビジネスとしての交渉も欠かせませんが、プロジェクトに対してプロフェッショナルが数人集まって、考えながら手を動かすことが目的です。肩書きではなく、人を眼差しながらシンプルに考えるようにしています。NEWPEACEのプロジェクトを新規的で代替の効かない価値のある実業にするために、先ほどの社内での言語や振舞いとは真逆のアプローチを取っています。

 

 それはニュースクール的な組織作りですね。以前は役割を肩書きとクリエイターの自発性で成立していました。しかし職能の細分化が進むことで、ブランドディレクションにおいては、ここまでしかやらないと手段で切るのではなく目的に関連する事柄に手を伸ばす。役割で決めないで、能力と関係性で明確化させる。

役割で認識を得ることは心地良さがありますが、それによって経営からクリエイティビティまでを繋ぐと歪みが生じます。その生じた歪みを正すだけがブランドディレクターやプロデューサーの仕事ではありません。それは少し人件費の高いプロジェクトマネージャーに過ぎない。プロデュースやNEWPEACE内でも難易度が高いと考えられているブランドディレクションは提案業です。私のプロジェクトに携わるメンバーには、特殊なプロジェクトだな、と感じてもらえるように努めたい。またビジネスに対する言語が違う人たちに対して、馴染みがないようなブランド戦略やクリエイティブな判断も、私自身が翻訳をしてエネルギーを収束させて行くことを目指します。だからこそ、自分が信頼しているプロだけをアサインし、中間管理職以上の仕事を自らに求めるのです。そうすることで、NEWPEACEの仕事の実像が見えてきましたし、携わるプロジェクトも大きくなってきています。また、NEWPEACEとはこれまで交わることのなかったような人々がプロジェクトに参画してくれるようになっていることに喜びを感じています。

 

 山田さんはアカデミック、リサーチの視点から批評性を持ってビジネスに取り組んでいます。ご自身が今までやってきたものを実業に組み込むことは簡単ではない中で、どのようにフレームワーク化に取り組んでいるのでしょうか?

「Brand Direction」ユニットの業務は、常に緊張感と隣り合わせです。自分たちよりもビジョンに本気であり、経営のプロである経営者に対して支援をするので、手持ちの手札は全て使い、能力と想像力を最大限発揮しなくてはなりません。私の場合、それが業務に関わる専門的知識やリサーチ手法、戦略立案の方法などが当てはまりますが、それをプロフェッショナルクオリティーまで昇華させるためには、一義的な思いつきではなく、フレームにして比較、改善を続ける必要があります。また会社としては、全員がチームになって最大限の出力を出す為に、自分のこれまで培ってきた能力も普遍化する必要があると感じています。

 

 自身の能力を普遍化すること、シェアすることに対して、抵抗感や葛藤はなかったのでしょうか?

会社に所属している以上、知的財産権は会社にあるのは当然ですが、自らがオープンな姿勢で働くかどうかはそれ以前の問題だと思うので、葛藤がないとは言い切れません。ただ、自分が目指すプロジェクトの実現のために、NEWPEACEという船の機動力を上げたい一心として割り切っているのかもしれません。ただ、ここでのポイントは、アセットの再現に能力を求めるということだと思っています。特に「Brand Direction」ユニットはクライアントワーク専門の部署なので、クライアントの皆様への価値の約束として、全員が高いレベルをそれぞれのキャリアで探求し合う中で、アセットを共有し合うことを目指しています。

 

 他者のビジョンという抽象的なものを浮き彫りにし、実務上のインパクトとを繋げる。それを違和感なくピタリと重なることは可能だと思いますか?

それは非常に難しく、定量分析的に示してみることも可能ですが、NEWPEACEがビジョンというある種の幻視と、実務の中間に立つことで可能なものになると思っています。こうした大きな野望のために、日頃の小さな振る舞いから意識しています。私はよく「私がNEWPEACEの社員ではないとしてお話すると…」という語り口をするのですが、それはまずクライアントとNEWPEACEの中間に自分が立つべきだと考えているからです。寧ろNEWPEACEすらもプロジェクトのステークホルダーの一つと考えることで、今の時代に有効なブランド戦略とクリエーティブを作り上げることができるように徹底しています。

 

 こうした抽象的なビジョンと生活の掛かった実務の行き来を、プロジェクトの速度感や社会の潮流の中で山田さんの実務とするために、最も大切にしていることは何ですか?

私たちの仕事は、一瞬でも気を抜くと虚業になると痛感しています。ブランドコンサルティングやVISIONINGと聞いて、「きな臭い」話だなと感じる人がいるとすれば、その判断に強く共感します。ブランド戦略やクリエーティブは、目に見えない幻のようでもあります。何が生業なのだろうか、何を納品してもらえるのか、という不安感を伴うこともあると思います。だからこそ、ビジョンやクリエーティブがどのように実務になり得るのか、ビジネスとプロジェクトを徹底して設計していきます。まずは人の声や思い、実業に深く耳を傾ける。価値が曖昧だと自分たちが不安にならないように、徹底的に時間を使い、思考を凝らす。共感を得られないことに対して恐れを感じ、プロジェクトを無闇に前に進めようとせず、説明を尽くして、ブランド戦略やクリエーティブの判断に必要な時間や空間を設ける。それらは、ブランド戦略やクリエーティブ、ビジョンの浸透を通して、働く人々を支援することが徹底した実業だと信じているからです。まだ深みは足りませんが、ブランディングやクリエーティブを通じて生まれるシチュエーションに対して、必要だと感じてもらえるような現実を生み出さなければならないと考えています。

 

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