【イベントレポート】クリエイティブと行政の関係を考える「地域ブランディング戦略会議」を開催!
イベント
2025.10.07

こんにちは、NEWPEACEの枝窪です。
2025年9月5日(金)、株式会社NEWPEACE主催によりオンラインウェビナー「地域ブランディング戦略会議」を初開催しました。
ゲストは、博報堂ケトル出身で佐賀市 情報発信強化アドバイザーを務める井手康喬さん。聞き手は、弊社代表で富山県クリエイティブディレクターの高木新平が務めました。行政に携わる方・クリエイター・地域企業にお勤めの方など、150名以上の方からお申し込みをいただき、「クリエイティブと行政はどう共創できるのか?」をテーマに、熱く議論が展開されました。
本レポートでは、パネルディスカッションを軸に見えてきた「クリエイティブと行政のコラボレーションのコツ」を参加者の反応も交えながら振り返ります。
「地域ブランディング戦略会議」とは?
クリエイティブと行政の関係を考えるために、地域で活動するクリエイティブディレクターをゲストにお招きし、地域ブランディングについて議論する一連のイベント。
- 登壇者:
- 井手康喬氏(佐賀市 情報発信強化アドバイザー、IDEPEN Inc.代表、Creative Director/Copy Writer)
- 高木新平(富山県クリエイティブディレクター、NEWPEACE Inc. 代表、SHONAI Inc. 取締役)
- 申込者数:150名超(行政関係者、クリエイター、地域企業にお勤めの方 など)
ディスカッションから見えた「地域ブランディングのカギ」
今回のパネルディスカッションで交わされた議論から、地域ブランディングを前に進めるカギをピックアップしてご紹介します。
① ビジョンが地域を動かす起点になる
議論を重ねるなかで、最初に浮かび上がったのは、地域におけるブランディングの重要性です。行政のプロジェクトには多様な立場の関係者が携わるため、必然的に関係者調整や意思決定などに時間も労力もかかります。だからこそ、目指す未来(ビジョン)を明確にし、関係者間で共有できる状態をつくることが重要ではないか、という声が上がりました。
井手さんがクリエイティブ・ディレクターとして携わっている佐賀市の取り組みでは、ビジョンを作るために、各関係者にヒアリングを重ね、「地域の目指すべき未来」を企画書として言語化しました。その企画書を共通言語として、行政や外部パートナーが同じビジョンに向かって自走しやすくなったそうです。
② 佐賀市と富山県。客観的幸福度から、主観的幸福度へ。
また、井手さん・NEWPEACEが協働推進している佐賀市のブランディング「あたりまえハッピー」と、NEWPEACEが取り組む富山県のブランディング「幸せ人口1000万」。一見、場所も文脈も異なる2つの取り組みですが、「主観的幸福度」という共通点が見えてきました。
たとえば、佐賀市は、2022年の全国都道府県ランキングにおいて「魅力度47位(最下位)」という結果でありながら、一方で「幸福度ランキング」では7位という高い順位にランクイン。このファクトからは「外から見た魅力度」は低いとしても、実際に佐賀で暮らす市民が感じている「主観的な幸福」は高く保たれているということがわかります。
これを受けて、佐賀市の観光プロモーションでは、「観光客向けの魅力」を前面に押し出すのではなく、まず市民自身が自分たちの日常にある「当たり前の幸せ」に気づくことが重要だと捉え直しました。観光のターゲットを「外から来る人」ではなく、あえて“佐賀市民”自身と、再定義しました。
一方で、富山県は、同魅力度ランキングでは全国4位、幸福度が全国39位と、まちの人々の主観的な満足度が低いという、佐賀市とは真逆の状況でした。「幸せ人口1000万」というビジョンを掲げ、関係人口1000万人の拡大を目指し、市民一人ひとりが自分のまちに誇りや愛着を持てる「ウェルビーイング先進地域」の実現を目指す方針としました。
佐賀市と富山県の取り組みは、まちの置かれている状況も、アプローチも異なります。一方で、外側からの魅力度ではなく、まちの人達の自信をつくることを重視する点は共通しており、今後の地域ブランディングのヒントとなる事例でした。
③ アプローチの違い 〜行政とクリエイティブの関係性〜
ブランドを体現するまでの「行政組織とクリエイティブ人材が協働するための体制をどのように組成するか?」についても議論が深まりました。佐賀、富山2地域における地域の動かし方について議論され、「内側から伴走するか、外側から会議体で推進するか」というアプローチの違いが見えてきました。
- 【相談室を設け、組織内部から伴走型】佐賀市(井手さん)
「サブスクのように自由に使えるクリエイティブディレクター」という形で、月1回の「なんでも相談室」を設置。行政内部の相談に継続的に応じ、市のブランド戦略から日々の業務の細かい相談まで幅広く柔軟に答えることで、特定の領域に絞らずにディレクションできる。 - 【新規会議体をつくり、組織外部からの推進型】富山県(高木)
有識者やクリエイターを巻き込んだ会議体を新たに設計し、知事を含むトップ層を動かす仕組みを構築する。外部の視点を取り入れることで、地域の“当たり前”を新しい角度から捉え直し、内側に眠る価値を再発見できる仕組みです。
当日は、上記3点のほかにも、登壇者が地域と関わることになったきっかけや、佐賀市・富山県それぞれのブランド実装ステップ、今後の展望まで、ここでしか聞けないリアルなエピソードも多数共有され、参加者の関心を集めました。ぜひ、次回はライブでご参加ください!
参加者からの質疑応答・コメント
参加いただいた方からのご質問と回答の一部を紹介します。
- Q1. 地域の最大公約数をビジョンにすると当たり障りのないものになりがちですが、それをいかに周りの人を巻き込んで浸透させていくかを知りたい。
- A.「一点突破」が重要。富山では寿司を起点にブランディング。寿司は具体的でありながら、水・日本酒・インバウンドなど多くの領域に波及しつつ、寿司といえば富山かという覚えやすい印象を獲得しやすい。
- Q2.自治体職員です。ビジョンに相当するものを作れども関係者が満足する1つのことに向かっていけず、ぐだぐだの繰り返しになりがち。市民や関係者を満足させるビジョンとはどういう要素を持ったものと考えるか。
- A.「誰にとって、どう必要か」を起点に考えることが大事。職員発想ではなく、市民・県民の発想にどれだけ寄り添えるか。外部の視点を適切に入れ、届けたい相手を具体的に想像しながら言葉を磨くことがポイント。例えば、「富山に何があるの?」と問われて明確に答えられなかった悔しさの部分が、まさに生活者感覚なので、その視点が大事。
寄せられたご感想・コメントの一部をご紹介します。
- 「行政のPR“あるある”と、その解決に向けた創意工夫のプロセスが具体的で、あっという間の時間でした!」
- 「民間の目線から見た地域ブランディングが垣間見られて、学びが多かったです。」
- 「普段は聞けない本音トークが満載で、ぐっと引き込まれました。」
- 「民間目線での計画・事業の進め方について、率直な話が聞けて良かったです。」
行政と現場、それぞれの視点から学びを得られたという声が多く寄せられました。いただいたフィードバックは、今後の企画づくりに活かしていきます。ゲストの井手さん、そしてご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。
次回予告&関連情報
弊社代表・高木 登壇イベント
高木が10月7日開催のPotluck Awardへ登壇し、「地域を動かす参謀論」をテーマに語ります。
チケットのご購入はこちらから:https://potluckaward2025.peatix.com/view
【次回予告】イベント第2回を11月に開催予定!ゲストは、万博クリエイティブディレクター、引地耕太氏。
「2025年、大阪・関西万博において、ブランディングはどのように実行されたのか?」
全国各地でブランド戦略から実装までを手掛けるNEWPEACEが開催する、ローカルにまつわる問いを深める戦略会議、第2弾。
- 日時:2025.11.20(木)19:00〜20:15
- 参加費:無料
- 登壇者:
- 引地耕太氏(大阪・関西万博デザインシステムクリエイティブ・ディレクター、VISIONs Inc. 代表)
- 高木新平 (富山県クリエイティブディレクター、NEWPEACE Inc. 代表)
地域を盛り上げたい地場企業の方々、クリエイター、行政関係者など、皆さんぜひお気軽にご参加ください。皆さまのお申し込みをお待ちしています!
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