薬の都・富山から「薬がいらない世界」を目指す、老舗製薬会社の新たな挑戦

クライアント: MAE
サービス: その他
ソリューション: CI/VI開発

CHALLENGE

3代目として、過去の蓄積を尊重しながら、未来に向けた非連続な進化を描けるか

OUTCOME

既存の業界や領域を超えて、社会的役割を起点にしたアイデンティティの実装

富山を拠点に半世紀以上、製薬事業を展開しながら、近年はアロマやハーブ製品、空間づくりまで事業を広げてきた前田薬品工業。

“薬”に頼らない新しい健康の形を模索してきた同社のリブランディングをNEWPEACEが担当。「企業もまた生き物である」と語る代表の思想にインスパイアされ、変わり続けることを組織の前提とする同社。新しいミッションとして「人と社会に新陳代謝を」を策定し、社名を「MAE」へ変更。ロゴ・WEBサイトなどを一気通貫で刷新するなど、統合的なリブランディングを支援した。

“製薬会社”の枠を超えて領域を広げてきた、老舗製薬会社リブランディングを支援

60年以上にわたって薬を作り続けてきた富山の老舗製薬会社、前田薬品工業。

近年はアロマやハーブを活かしたプロダクトの販売や、ホテルやサウナといった場所づくりなど、あらゆる事業にチャレンジ。“製薬会社”の枠を超え、医療だけでなく、心や身体、社会へと、健康のアプローチを積み重ねてきた同社のリブランディングをNEWPEACEが担当した。

代表の前田氏との対話を通じて“薬”がいらない世界を目指して、薬だけに頼らない新しい健康のあり方を模索し、様々な新規事業を展開してきた同社の歩みを、「企業や地域が新陳代謝を続けることで、人々が自信を取り戻し、未来の成長につながる」と解釈し、ミッションを「人と社会に新陳代謝を」へ刷新。

前田薬品工業の「前田」にルーツを残しながら、“前に進む”という言葉のニュアンスを込めて「MAE」へ社名変更し、ロゴを制作・WEBサイトをリニューアルした。

富山の地で、前田薬品工業の変化の熱源に触れる

プロジェクト始動のきっかけは、Webサイトリニューアルの相談。しかし、担当者とのヒアリングを重ねる中で、すでに“製薬”という枠にとどまらない多様な事業を展開していることこそが同社の強みであり、企業の実像と外部からの認識のギャップが課題であると再設定した。

代表の前田氏が体調不良をきっかけにアロマオイルと出会うという偶然の発見から新規事業が立ち上がっていった過程を丁寧に紐解く中で、企業の変化の熱源が前田氏の経験や感性にあることを明確化した。

Webサイト単体の更新にとどまらず、ミッションや社名、ロゴといったブランド全体の土台から見直すプロジェクトを提案。スコープを拡大することになった。

転換期の老舗企業に対する、未来を見据えた言語化と再設計

前田氏個人の体験から生まれたプロダクトや空間が次第に企業の柱となってきた中で、60年以上の歴史を持つ老舗企業が、これから何を軸に社会と関わり、誰にどのような価値を届けていくのか。事業領域の広がりは、社内外にとってブランド理解の難しさにもつながっていた。

そこで私たちは、事業に携わるメンバーが同じ方向を見据えるための共通言語として、企業の価値観と姿勢を定義し、明文化することを提案。表層的なリニューアルではなく、伴走者として企業の“重心”そのものの再設計をプロジェクトに組み込んだ。

変化を前提とする企業の核を言語化する

「企業もまた生きものである」という代表の前田氏の思想のもと、変化を続けてきた企業だからこそ、変わり続けることを肯定する姿勢そのものをブランドの核に据えるべきだーNEWPEACEは、これまでの前田薬品工業のあり方に、良いものを取り入れ、古きを更新していく生物の新陳代謝の営みをなぞらえ、「人と社会に新陳代謝を」という新たなミッションを策定。

代表個人の体験を起点に、偶然の出会いを受け入れ、柔軟に事業へと転換してきた企業文化を象徴する言葉として位置づけた。

同時に、社名についても検討を行った。「前田薬品工業」という名称に宿る歴史や信頼を継承しながら、未来に向かって軽やかに次のフェーズへ進む言葉として、「MAE」を提案。創業家の名でもある「前田」にも接続するこの言葉は、変化しながらも原点は揺らがない企業姿勢を体現している。

3代目として、祖父へのリスペクトと「前田姓」への呪縛、自身の好奇心との葛藤を経て、「前田」という名を手放す決断に至った経緯も、この社名変更に重ねられている。

視覚表現としての“新陳代謝”

新しいビジョンと社名にあわせて刷新したコーポレートロゴは、MAEが持つ歴史と革新の両面を表現。伝統や信頼を印象づける明朝体をベースに、革新性を表現するゴシック体の要素を重ねることで、MAEが体現する”新陳代謝”のスタンスを可視化した。

Webサイトでは、事業紹介にとどまらず、富山という土地との結びつきや、「まえに、いるひと」としてMAEで働く社員、MAEの姿勢に共感いただいている人々のインタビューコンテンツを掲載。サイトを訪れる人が“変わり続ける企業”としてのMAEのあり方を感じることのできるサイトに仕上げた。

変化を受け入れる力を、社会全体の推進力に

Webサイトやロゴの刷新といった表層的な変更にとどまらず、企業としての思想・姿勢を再定義した「MAE」のリブランディングプロジェクト。それは、個人的な体験から事業が芽吹き、成長してきたMAEの歩みを、言葉と構造に翻訳するプロセスであり、変わり続けることを組織の前提とするMAEのあり方をブランド全体に通底させる取り組みとなった。

老舗企業ながら変わることの意味を正面から肯定し、社会の変化を外側から待つのではなく、変化の連鎖が企業内から社会へと広げていく構造を自らつくる。その一歩目として「人と社会に新陳代謝を」というミッション策定と「MAE」への社名変更、それに伴うロゴとwebページの刷新という一連のMAEのリブランディングプロジェクトは、同社の“新陳代謝”を社内外に示す事例になったと言えるだろう。